手術におけるデジタルイラストの効果的な活用法-6つの論文まとめ-

デジタルイラストレーション

手術において、デジタルイラストは非常に有用です。

本記事では、手術におけるデジタルイラストの効果的な活用法を解説します。

6つの論文を紹介しながら、デジタルイラストがもたらす具体的なメリットや、手術においてどのように活用することができるのかを解説します。

デジタル機器を使用した手術イラスト作成法

手術イラストの作成においては、まず描くべき構造物や手術操作の抽出が重要である。これを行うためには、解剖学的知識と術式の理解が必要であり、指導医との議論や成書を参照することで、勉学を行うことが望ましい。術前に重要な要素を文字や簡略化した画でリスト化しておくことで、術後のイラスト作成がスムーズに進む。

デジタル技術を活用した手術イラストは、タブレット端末やPCを用いて制作される。これらのデバイスを使用することで、従来のアナログ手法と比べて以下の利点が得られる。

  1. 多彩な色の使用:  タブレット端末やPCを使用することで、多くの色を自由に使用でき、イラストがリアルで鮮やかに仕上がる。
  2. 拡大縮小の自由度:  デジタル画面上で拡大縮小が容易であり、広範囲から細部まで描画が可能。
  3. 修正・追記の容易さ:  デジタル技術を利用すれば、何度でも修正や追記が簡単に行うことができる。また、レイヤー機能を使うことで、構造物や手術操作を別々に描画し、後から重ねることができる。

タブレット端末向けのイラストアプリは、無料から数千円程度で入手できる。これにより、手術イラスト作成がより身近なものとなり、多くの医師が気軽にデジタルイラスト作成を試すことが可能である。

非侵襲的な治療が増える中で、デジタルイラストレーションの普及は、新しい手術学習法として提案できると考えられる。手術イラストは術中写真と比べて、空間的・時間的な変化を1枚に集約し、理解しやすい表現が可能であるため、手術記録の参照や学習において非常に有用である。

図:文献「デジタル機器を使用した手術イラスト作成法 -横田千里先生(著)-」より引用

若手脳神経外科医が解剖と手術を効率よく学ぶための手術イラストレーション作成法

教育法としての手術イラスト作成の重要性について述べられています。

修練医に術前の手術イラスト作成の重要性を説いている。術前のイラストを作成することで、手術戦略を計画し、実際の手術が術前のシミュレーション通りに進むことが示されている。手術解剖の正確な理解は、安全な脳神経外科手術を行うために重要である。

「イラストは時間と空間を超えるものであり,手術のすべての工程が蘇る記録法と提唱しているように,手術のスケッチは見るだけで手術の要所や解剖を理解できるように作成する必要があるため,外科医にとって欠くことのできない手術学習法といえる」上山先生の言葉を引用

スケッチを行うことは、情報技術が発展した現代においても、外科医にとって欠かせない手術学習法である。スケッチは手術の要所や解剖を理解できるように作成する必要があり、立体的理解が明確でない場合には難しい。層ごとに構造物を描くことで、細かな解剖の知識が要求され、理解が足りない部分が明確になる。

術前後の術野イラストを見比べ、その違いがなぜ生じたかを1症例ごとに学ぶことが重要。イラスト作成を繰り返すことで、重要構造物の現実的な可動範囲を学び、術前の静的イメージから動的イメージへの予想展開図を高い精度で作成できるようになる。

図:文献「若手脳神経外科医が解剖と手術を効率よく学ぶための手術イラストレーション作成法 -吉金 努先生(著)-」より引用

手術教育のためのデジタルイラストレーション

手術イラストを作成することにより、手術に対する洞察力を養い、手術の理解を深めることができる。また、手術イラストは助手にとってもルーティンとして行われ、助手にも学習効果が期待できる。

手術イラストを作成するためには、種々の術前画像の情報や類似症例のビデオ、おのおのの経験や教科書的情報を統合して理解する必要がある。特に、外科解剖を表現するうえで、各構造物の立体的関係を表現するためには、レイヤーを重ね合わせるデジタルイラストレーションが特に有効である。

複雑な手術の場合、手術イラストを作成するためには時間がかかるが、手術の細かな描写を行うことで、手術イラストから多くの情報を得ることができる。また、時間がない場合は、必要最低限の情報を表現することでも十分である。

手術イラストを描くためには、洞察力、企画力、画力が必要である。洞察力は、局所解剖を理解し、手術の意図や術者の真意を見通す力を養うことが重要であり、手術室に足を運んで手術を体験することが重要であるとされる。最近の労働人口減少やCOVID-19の影響により、デジタル化推進や労働時間削減が進む中、時間生産性や教育効果の改善がますます重要である。手術イラストは、時間効率と教育効果の両方を改善することができる有効な方法であり、手術イラスト作成の意義や工夫についても言及されている。

図:文献「手術教育のためのデジタルイラストレーション -野田公寿茂先生(著)-」より引用

脳神経外科手術のデジタルイラストレーション

手術イラストを作成することにより、手術内容を整理し理解を深めることができるだけでなく、手術に立ち会えない医師たちにも手術内容を理解しやすくすることができる。手術イラストを作成することは、手術イメージの構築に非常に役立つ。特に体位取りは、手術ビデオに記録されないため、できるだけ手術場に足を運んで確認する必要がある。

デジタルイラストレーションのメリットとデメリット。

デジタルイラストレーションを使用することにより、一段階的なやり直しが容易であり、濃淡、影、光の反射などが異なるレイヤーで作成でき、別個に修正・削除が可能であること、保管・管理が容易であること、論文用の図の作成能力が向上することなどのメリットがある。

ただし、慣れるまでに時間を要することや、ペンタブレットやイラスト作成ソフトなどの金銭的負担があることなどのデメリットも挙げられる。

図:文献「脳神経外科手術のデジタルイラストレーション -松川東俊先生(著)-」より引用

手術記録におけるデジタルイラスト作成の経験と考察

本研究では、iPad Pro 10.5インチおよびiPad第6世代とApple Pencil第1世代を使用し、Notes AppやProcreateといったアプリケーションを用いて骨盤臓器を中心としたテンプレートイラストを作成し、直腸手術の手術記録に活用された。これにより、症例ごとの脈管の分枝形態や腸管の長さなどの差異に対応することができた。

デジタルドローイングは、紙と鉛筆を使用するアナログ描画に近い感覚であり、拡大・縮小・回転などの操作が可能で、非常に細かい描画が容易に行えた。また、光沢や陰影を加えることで立体感を表現することも容易であった。さらに、作業履歴が保存されているため、間違った場合の「戻る」「進む」機能が作業時間の短縮に寄与し、タブレット端末上で全ての操作が行えるため、作業場所や時間を選ばないことも有利な点であった。

レイヤー機能は、効率的なイラスト作成には欠かせない利点であり、個々の症例における外科的解剖、手術術式、病状などのさまざまな差異を容易に表現することができた。また、テンプレートを共有することで、他の外科医との協力が可能になった。今後は、3Dコンピュータグラフィックスの作成技術が一般化することで、さらに正確で簡便で迅速で美しい手術記録を作成することが期待されている。

図:文献「手術記録におけるデジタルイラスト作成の経験と考察 -大村範幸先生(著)-」より引用

デジタル描画デバイスを用いた,「手術の流れ」がわかる手術記事

手術イラストは手術の「流れ」を視覚的に理解するために必要な情報を1枚のイラストに盛り込むことが重要である。タブレット端末とデジタル描画アプリケーションを用いることで、手軽に高精細な手術イラストを作成できるようになった。

筆者はiPad ProとApple pencilを使って、プロクリエイトを用いた手術イラストを描いている。レイヤー機能を使うことで、異なる脈管・臓器を別々のレイヤーに保存して、複雑な手術イラストを容易に描ける。手術イラストの描き方を学ぶには、模写が有用である。

タブレット端末を用いた手術イラスト作成は、外科医学教育手段になりうる。手術イラスト作成に絶対の正解はなく、新しい技術の導入とともに、より判りやすい手術イラストを作成するための工夫が必要である。

  • 手術イラストの作成に必要な情報量と工夫
  • 手術イラストの種類と役割
  • 術前解剖、切除ライン設定、臓器摘出時、手術終了時の手術イラストについての説明
  • タブレット端末を用いたデジタル描画による手術イラストの作成方法と、描画アプリケーション「プロクリエイト」の使い方
  • レイヤー機能を使った手術イラストの描き方や、手本となるイラストの模写が有効であることについての説明
  • 手術イラスト作成における結語として、絶対的な正解はないが、新しい技術を導入しながら判りやすい手術イラストを作成するための工夫が必要である。

図:文献「デジタル描画デバイスを用いた,「手術の流れ」がわかる手術記事 -堀周太郎先生(著)-」より引用

まとめ

本記事では、6つの論文を紹介しながら、手術におけるデジタルイラストの効果的な活用法について解説しました。

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