デジタルでイラストやマンガを描く方が増えていますが、医師の間でも手術記録や論文のシェーマなどでデジタルイラストを扱う需要が高まっています。
デジタルイラストが普及する以前から医師は手術イラストを作成していました。なぜ医師が手術記録にイラストを描くかを、馬場先生は次のように述べています。
このページでは、手術記録でデジタルイラストを作成する筆者が、実際にイラストを作成して感じた学習効果を紹介します。
術前・術後のイラストを描き、手術の理解を深める
これは、小脳の脳動静脈奇形に対して、Occipital transtentorial approach(OTA)を行なった手術です。
術前の予想に対して、難渋した点、工夫した点をまとめることで、手術の理解が深まります。
例えば、このアプローチでは、病変に到達するためには、後頭葉を大きく牽引しなければなりません。術前のイラストでは、脳ベラ(脳を牽引する手術道具)1本の使用でこの事実を深く考えていませんでした。実際の手術では、髄液排除をしたり、脳ベラを2本使う、脳表の静脈をできるだけ剥離するなどの工夫が必要となります。
このように実際の手術で学んだ経験をイラスト(難しければメモ)に起こすことで、手術への理解が深まります。
吉金先生は論文で次のように述べています。
解剖学的名称を覚える
これは後頭葉AVM(脳動静脈奇形)のイラストです。
術前に勉強した解剖学的名称を記載しています。この脳の中の一部の術野にも、たくさんの用語が詰まっています。
血管が分岐する度に、また脳のしわ一つ一つに名称が付いています。
イラスト作成では、自分のわからない部分があれば不明瞭に描いてしまいます。
解剖の名称を知ることで、はじめてその組織を認識することができます。
学習したことをメモすることで、さらに理解を深める
これは、右被殻出血に対して開頭手術を行なったイラストです。術後により詳しく勉強をして学んだことを記載しています。
まとめ
手術記録に対するイラストの効用を研修時代を思い出しながら紹介しました。
実際のイラストを描く手順はこちら⬇︎
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<参考文献>
- 馬場 元毅:Dr. BABA のメディカルイラストレーション講座. 東京, 三輪書店, 2017
- 吉金 努ら: 若手脳神経外科医が解剖と手術を効率よく学ぶための手術イラストレーション作成法. 脳外誌28巻11号, 2019年11月
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